パリ郊外のレオン・ブルム高校。白人のほか、黒人やアラブ系やアジア系など、様々な人種の生徒が集まるクラスに、ベテランの歴史教師アンヌ・ゲゲンが担任になる。そのクラスは学校一の落ちこぼれクラスで、授業中にヘッドフォンをつけたままだったり、マニキュアを塗っていたり、突然ケンカが始まったり。ゲゲン先生の厳しさにしぶしぶ従う生徒たちだったが、彼女が忌引きの間に代わりの先生が来ると、たちまち反抗と授業妨害の渦。
そんな生徒たちに、ゲゲン先生は「レジスタンスと強制収容についての全国コンクール」に応募しようと提案。ホロコーストの犠牲になった子供と若者たちについて、考察を求めるのだった。
ゲゲン先生は、絶えず喧噪を作り出す気ままな生徒たちに毅然と接し、どんな時にも自分にイニシアティブがあることを譲らない。そして、問題が起こるたび、生徒たちに厳しくも温かな気付きを与えるのだ。
コンクールへの出場をムリだと怒る生徒に、「笑われるのが怖いから、やる気がないといってる」と言い、自己評価が低いせいの本音に気付かせる。発表準備が始まると、「ネットがあるから資料を集めるのは簡単だが、表面的ではダメだ」といって、生徒がネットから集めた腕の刺青写真の意味を考えさせる。そして、同じテーマを選んでしまったグループが言い争うと、「なぜ仲間同士で批判し合う前に、もっと話し合わなかったのか」と、互いの情報交換の大切さに気付かせるのだ。
ショアー記念館で、同世代の犠牲者の無数の写真に息を飲む生徒たち。一つの民族を全滅させるために、最初に標的になったのは、産む性である女性と、未来を担う子供や若者たちだった。
そしてホロコーストの生存者レオン・ズィケル氏の話に耳を傾けたことが、生徒たちを大きく変えていく。大戦当時、生徒たちと同じ年頃だったレオン氏の、死と隣り合わせの過酷な体験。なぜ耐えられたのか、の質問に「友人に大変な体験をしたといばりたかった」と答えているが、そんな素朴な動機も、思春期の彼らの心に共感を呼んだだろう。
西洋の歴史はキリスト教と切り離せないからか、ゲゲン先生は授業で詳しく歴史に触れ、教会のステンドグラスに描かれた図柄から、イスラム教を蔑視するプロパガンダを読み取らせたりする。これは高度な考える授業だ。
発表への考察を深めていった生徒たちは、ナチ時代のポスターに、当時の政権の狡猾なプロパガンダを読み取ったり、ガス室を描いた漫画のなかの犠牲者に、髪や服が描かれていることに、犠牲者の人間としての尊厳を取り戻したい、という思いを読み取っていく。
家庭が貧しく、生徒の母親がアル中だったり、黒人の生徒が白人の女友達の親に、冷たくあしらわれるシーンがあったり。人生の早い時期から、すでに試練を抱えている彼ら。だが、争いが多く、低い自己評価からケンカを繰り返していた生徒たちは、学習を深めるにつれ、どんどん自信に満ちて落ち着いていく。その生き生きとした変化も、歴史を受け継ぐことが成長につながっていることも、とても感動的だった。