2016年11月03日

グッバイ・サマー

 画家志望のダニエル。チビでかわいい顔のせいで、女の子に間違えられる彼は、クラスメートにからかわれてばかり。そこへ、家の手伝いのせいでガソリンの匂いを漂わせる風変わりなテオが転入してきて、孤独でマイペースな二人は意気投合。家の中でもモヤモヤを抱えた彼らは、遠くへ脱出しようと、スクラップを集めて作った車で、旅に出ることに。

 二人のキャラクターが魅力的。
 ダニエルは、外見とは裏腹に、好きなクラスメートのローラに相手にされず悩みながら、女の裸の絵を描いたりしてる、性に目覚めたいっぱしの男の子。機械に強いテオだが、ダニエルが弟とサッカーをしてると、音マネをしながら中継を始めたり、誰も来ないダニエルの個展に現れると、身分の高い人ですし詰めの会場に来たかのように振る舞って笑わせる。器用でひょうきんで、気が強くてしっかり者。

 家に擬態する車は、警察にも怪しまれず、パリをのろのろと南下していく。歯医者の庭に紛れ込んで泊めてもらうも、恐ろしげな道具に驚いて夜逃げしたり、長髪を切る決心をしたダニエルが、風俗店を兼ねた怪しげな店に入ってしまい、客のトラブルで途中で逃げたせいで、真ん中ハゲの落ち武者のような髪になったり。
 だが、スリルいっぱいのおかしな道中は、ロマの人たちの家を破壊する警察の非情な作業に巻き込まれ、車が燃やされてしまったことから、二人がケンカになって、空中分解してしまう。

 ダニエルは、人と同じことを嫌い、長髪にこだわりながら、女の子のような外見に悩み、テオに相談していた。どうしたら自分らしく振る舞えるかは、思春期の重大な問題だ。過干渉気味の母親も、彼にはしんどい。だが、それなりの愛情に満ちた普通なダニエルの家庭と違い、テオは、家で真面目に手伝っても、父に口汚くののしられる。病気の母も彼に辛くしか当たらない。そんな環境のなか、自尊心高く生きるテオは大物だ。だが、彼はダニエルに何かにつけてアドバイスしながら、本当は自分のことを、もっと聞いてほしかった。

 何とかパリに戻ってきた二人だったが、テオの父が引っ越しを決めていた。転入してきたばかりのテオだったが、もしかすると、今までも何度も転々とする生活だったのかもしれない。威圧的な父と兄の横で、大人びていたはずのテオが、急に小さく見える。抗えない突然の別れが、とてもとても切なかった。だが、二人の冒険は、きっと一生の宝物。ダニエルはテオから学んだことを、糧にして成長するだろう。
 
posted by HIROMI at 11:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記