2017年02月17日

未来を花束にして

 1912年のロンドン。洗濯工場で働く21歳のモード・ワッツ(キャリー・マンガン)は、同僚のバイロレット・ミラー(アンヌ・マリー=ダフ)に誘われて行った公聴会で、思いがけずバイオレットに代わって発言したことをきっかけに、女性参政権を求める活動に関わるようになる。

 当時の女性の境遇に驚く。モードが洗濯工場で働き出したのは、7歳から。母親も子供の頃から同じ工場で働いていた。賃金は、男性が19シリング、女性は13シリングしかないのに、労働時間は女性の方が3時間も多かった。労働の過酷さから洗濯女の寿命は短く、モードの母は彼女を産んだ4年後に死んでいる。学問も与えられない中、洗濯女の子供は洗濯女にしかなれないのだった。

 そして当時の女性には、子供の親権も財産の管理権もなかった。政治参加も許されず、父親や夫が代弁すればいいとされていた。そんななか、女性参政権は状況をうち破る大きな希望だった。モードは、当たり前のように耐えてきた理不尽な不平等から、違う生き方を求めて運動に惹かれていく。

 女性たちの思いを束ねたリーダーは、エメリン・パンクハースト夫人。労働者階級の女たちと、中産階級の女たちが、身分を越えて運動を進めていった。エメリン役のメルリ・ストリープが屋敷の窓下に集まった大勢に貫禄たっぷりに演説するシーンは、先日の授賞式でのトランプ批判を思い出した。
 
 参政権を求める女性たちは危険視され、公聴会で意見を聞くパーフォーマンスの一方で、活動家たちには写真による監視がなされていた。
 修正案却下に抗議し、議会前に集まった女たちを、取り囲んだ警官隊が殴りかかる。逮捕されたモードたちがハンストをすると、数人で押さえつけて、鼻からチューブで流動食を流し込むという拷問が待っていた。警察の徹底した弾圧の酷さは、どれほど彼女たちを恐れていたかということでもあるだろう。

 彼女たちの手段も過激で、「言葉よりも行動を」のスローガンのもと、誰も傷つけないよう早朝に郵便ポストを爆破したり、通信手段を切断したり、政府要人の別荘を破壊したり。それでも新聞が無視すると、ついに国王への直訴を思いつく。

 職場や近所の冷たい目。優しかった夫も、言うことを聞かない妻を冷笑され、モードを家から追い出し、息子とも会えなくなってしまう。子供を思う母の切なさ。平等や当たり前の生き方を求めようとして、彼女が払った犠牲はあまりにも大きい。
 弾圧にも別離にも、心折れながら決して負けずに、命がけで闘った彼女たち。私たちが当然のように行使している権利は、彼女たちが流した血と涙の結晶なのだ。遠い歴史がずっしりと重いと思った。
posted by HIROMI at 18:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記