2017年05月07日

午後8時の訪問者

 体調を崩した先輩医師の代わりに、小さな診療所に勤務していた若いジェニー。研修生のジュリアンを指導しながら患者を診終わり、診療時間がとうに過ぎた8時過ぎに、ドアのベルが鳴った。応対しようとしたジュリアンを制止したジェニーだったが、翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかったと知らされ、それはベルを押した人物だと分かる。

 ジェニーはジュリアンに、患者の痛みに感情移入しすぎると注意していた。冷静さや患者との適度な距離は、確かに医者として必要なこと。一方、診療所を去る彼女との別れを惜しんだ患者が歌をプレゼントするほど、彼女は患者に寄り添ってきた。指導する立場として、上下関係を見せようとして、訪れた人を受け入れたいという自分の思いを抑えたのだった。
 助けを求めた少女を見殺してしまったという罪悪感に襲われたジェニーは、少女の死に取り憑かれたかのように、その真相に迫ろうとする。

 携帯に取り込んだ少女の写真を、自分が代理をした医師や、ジュリアンや、患者たちに見せてまわるが、誰も知らないという。ところが、ブライアンという少年を往診した時、脈が急に速くなったことで、彼が彼女を知っていると気付くのだった。どうしても口を割ろうとしない彼から、やっとき聞き出せたことは、少女が娼婦かもしれない、ということだった。

 ブライアンはずっと胃の痛みを訴えてる。それは、彼が目撃し隠していることと関係しているのだろう。情事の場所としてトレーラーを貸していた男性の父親も、ジェニーに問われると、急に胸の痛みを訴える。ブライアンをかばってジェニーに抗議に訪れた彼の父親も、話しているうちに心臓の激痛に襲われる。皆、心の痛みや葛藤が、体の反応として表れているのだ。

 ジュリアンが去って一人で働くジェニーは、受付や看護師の仕事も含め、すべて一人でやっている。往診すれば、介護士のよう。福祉事務所との連絡を取ったり、一人ひとりへの丁寧な対応は、予約制だからだろうか。医師との対面がたった数分の日本とは、格段の差を感じてしまう。生きている時間のすべてを捧げるように医療に従事しながら、ねばり強い聞き込みを続けるジェニー。そんな彼女も、疲れや焦燥感が、ニコチン中毒という症状となっているかのようだ。

 だが、ジェニーに問われた彼らは、葛藤の中で変化を見せていく。ブライアンの父は自分と向き合う。ネットカフェで偶然写真を見せられた少女の姉も、自分の思いに気付く。そしてそれが、少女の死の謎と彼女の身の上を明かしていくことにつながっていく。

 そして、ジェニー自身も、少女を探す中、自分の生き方が定まっていく。就職が決まっていた大きな病院を断り、人々に近い小さな病院が自分の居場所だと気付くのだ。

 死んでしまった少女は、黒人の移民だった。彼女が誰かを探す中、ジェニーは組織に脅迫されるが、それだけで少女が生きていた過酷な状況が想像される。
posted by HIROMI at 10:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記