2015年07月17日

ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男

 1985年、ジョージア州オーガスタ。事務所に帰って来たジェームズ・ブラウン(チャドウィック・ボーズマン)は、自分のと決めているトイレに他人が入っていたことに怒り、天井に銃をぶっ放して逃走した。
 映画は、彼の子供時代から青年時代、スターに上りつめた後までを、時代を行ったり来たりしながら描き、冒頭の場面は、映画のずっとあとに、逮捕されて投獄される場面に続く。どキモを抜く始まりだが、彼の生涯は、どの場面も強烈だった。

 森の中の掘っ立て小屋に住んでいた、極貧の少年時代。母が家を出、父はジェームズを親戚に預けるが、そこではわずかな報酬のために夜遅くまで客引きをさせられた。何とか命をつないで青年になった彼は、一着の背広を盗んだ罪で何年も服役することに。そこに慰問に訪れたゴスペルメンバーの一人ボビー・バード(ネルサン・エリス)と親しくなったジェームズは、彼の家に住まわせてもらうことになり、ボビーとともにライブに打ち込んでいく。生涯にわたって彼を支えるボビーの存在は本当に大きい。

 ライブの場面がすごく楽しかった。高速ですべるような足さばきは、マイケル・ジャクソンにそっくりで、マイケルが彼に大きく影響を受けていたのが分かる。舞台では誰もがジェームズと一緒に踊っていて、すごいノリ。曲の中では「イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド」が一番好きかも。
 清志郎が、自分のマントショーはジェームズ・ブラウンがやってたことだと言っていたけど、マントが清志郎のよりずっと地味だったこと以外は、くたびれた風でしゃがんでいる時の間奏も、去っていくフリの時の切なそうな目つきまでが、そっくりだった。

 インタビューで、今やどんな音楽にも自分の片鱗があると語る彼。実際、彼の音楽は最先端で、新しい時代を切り開き、後に続いた者たちに、多大な影響を与え続けたという。
 一方、強烈な自信は独裁になり、遅刻したり気に入らない者から罰金を取ったり、自分の気に入るリズムを追求するあまり、ギターやベースをドラムだと言わせたり。彼のスター人生は、初めから仲間の嫉妬や裏切りに満ちているが、それ以降も、まるで自分から自分のすぐそばに敵を作っているかのよう。横暴で破天荒で、問題の多い人物だったのかもしれない。

 それでも、どんな苦境にも負けず、貪欲にチャンスをモノにし、自分のスタイルを貫いていくさまは魅力にあふれている。彼の全盛期は、黒人運動と重なっていて、キング牧師が暗殺され騒然となるなか、周囲の反対を押してライブを敢行し、黒人たちに自制を求めて黒人としての誇りを訴える場面は、知的で落ち着いた本物のカリスマだ。黒人として発言すれば、白人から過激派と見られ、改善を訴えて大統領に会えば、黒人からは権力に近づいていると見られる、などジレンマも抱えていた。

 欠点が多く、たくさんの人に去られても、それ以上の多くの人々を引きつけてやまなかった人物。時々スクリーンの観客に向けて、「絶対に屈しない」とか「前進あるのみ」と気持ちを語ったり、「俺は音楽もビジネスもやるんだ」と説明したり。嫉妬で妻を殴ってしまったあとに、恥じらうような視線を向けたり。そんな演出も自然だったし、こちらを見つめる彼がチャーミングだった。 
posted by HIROMI at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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