2015年08月16日

チャップリンからの贈り物

 刑務所から出てきたエディ・リカール(ブノワ・ポールヴールド)を迎えに来たオスマン・ブリシャ(ロシュディ・ゼム)は、エディを自分の家の後ろに置いたトレーラーハウスに住まわせる。いわくありげな男の友情は、ほんわかしてるけどノワールの香り。オスマンの家といえば、おんぼろで冷蔵庫も壊れてる。貧しいオスマンは、獣医になりたい娘の夢をかなえてやるどころか、入院中の妻の治療費もままならない状態だった。
 クリスマスの夜、エディはどこからか盗んできたクリスマスツリーとテレビをオスマンにプレゼント。折しも、チャップリン死去のニュースが流れ、それを見ていたエディは、チャップリンの遺体を盗んで大金を得ようと思いつく。

 墓地に忍び込んで棺を掘り出し、別の穴を掘って苦労して埋める。何だか間の抜けた感じだけど、セリフのない長いシーンは、ノワールの香り。首尾は完璧だと思ってるエディは、チャップリン夫人に電話して身代金を要求するも、相手は英語しか話さない。「フランス語で話せ!」とか「こっちはスイスの窃盗団だぞ」とか、身元がバレそうなセリフが笑える。
 困った二人は、警察に電話するが、本当に犯人かを疑われ、証拠に棺の写真を要求される。パニッくったエディは、要求額をいきなり半分に下げてオスマンともめる。そのドタバタが何ともオカシイ。それでも警察は二人に向かって動き始め、金の受け渡しまで事態が進むが、結局不発。
 初めから乗り気でなかったオスマンは、捕まりそうになったショックでエディを追い出すが、治療費支払に追い詰められ、結局エディに頼み込んで犯罪の続きを演じることに。切羽詰まったオスマンが、要求額をきっちり治療費まで下げて必死で脅すのが、可笑しくも切ない。

 世界のチャップリンの棺を盗むというのは、大それているけど、発想自体がユーモラス。エディは、読書好きで、オスマンの娘サミラ(セリ・グマッシュ)を可愛がる。何やらいかがわしいものの、どこかさみしげで憎めない人物だ。妻と娘を心から愛しながら、金に困る実直なオスマンの窮状は胸が痛む。エディは、「チャップリンは放浪者や貧乏人の友たち。彼に金を借りよう」とオスマンを説得したが、二人とも貧しい移民で、実際チャップリンの映画に出てくるような底辺の人々だ。

 特に印象に残っているのは、オスマンに追い出されたエディが、サーカスの女団長ローザ(キアラ・マストロヤンニ)に見込まれて道化を演じる場面。スーツを着た二人の男が、スローモーションで殺し合う舞台は、可笑しくもペーソスに満ちている。

 この話は実話だそうだ。でも、逮捕された後の二人の運命は脚色されているという。国外退去や5年の懲役が求刑された二人だが、チャップリン家が告訴しなかったこともあり、幸運にも放免。エディはサーカスに居場所を見つけ、ローザの愛も得るし、オスマンには、思わぬプレゼントが届く。チャップリンの映画のような、温かな結末がうれしかった。
posted by HIROMI at 13:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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