2016年02月20日

愛しき人生のつくり方

 夫に先立たれたマドレーヌ。長男で郵便局員だったミシェルは、定年退職で所在ないが、彼の妻ナタリーは、まだばりばりの現役教師。独立心旺盛でおちゃめはマドレーヌのもとには、孫の大学生ロマンがしょっちゅう訪れるが、彼はまだ将来の目標が分からない。ある日、マドレーヌが倒れ、老人ホームに入ることになるが、ロマンはそこにも通って、彼女も新しい環境になじむ。ところが、友人の葬儀の帰り、自分の家に他人が住んでいることを知った彼女は、突然ホームから姿を消してしまうのだった。

 人々の何でもない暮らしが、可笑しくて寂しくて、愛しい。
 机にお菓子を並べただけの、ミシェルの質素なお別れ会。40年の思いが込められない不器用な短いスピーチ。ロマンとマドレーヌがホームの壁に飾られた絵に引きつけられるが、牛か馬かわからない作者の絵は、わざわざ訪ねて行って他の絵をもらっても、何の動物だか判別できない。マドレーヌが倒れた知らせに、沈痛なミシェルとロマンのそばで、ロマンのルームメイトのカリムの携帯が、間抜けた音を出す。シリアスなはずのシーンも、アルアルの間の悪さに思わず吹き出してしまった。

 レストランのメニュー選びにもぐずぐずするミシェル。母親をホームに預けたのも、家を売ったのも、望んでではなく状況に押し切られて。彼女の失踪を知ると、死んだと思い込んで落ち込むものの、無事だと知らされると、母の行動を迷惑だと言って妻にあきれられる。彼は、自分の不安定さが妻を苛立たせているとは知らず、妻の愛を求めてあがく。一方、ナタリーは、退屈な夫が今も自分を情熱的に愛しているとは知らず、うんざりのフリで彼の反応をためそうとする。そんな両親の間で、ロマンは冷静で優しい緩衝剤だ。

 そしてロマンもまた、まだ見ぬ運命の人を探す旅人。祖母の友人の葬式で一目ぼれした女の子とはそれっきり。だが、祖母を探して訪れた彼女の故郷の小学校で、またしても一目ぼれの相手ルイーズに出会うのだった。

 この映画、クロード・ルルーシュの「男と女と男」のコーヒーに砂糖を三つ入れる主人公が、同じだけ入れる女の子とやっと出会うのを思い出した。冒頭、ロランが墓地を間違えて祖父の葬儀に遅れ、最後、ルイーズもマドレーヌの葬儀に遅れて来るから。

 祖母に付き添った場所で恋人に巡り合った話を聞いたカリムが、めったに会わない祖母を連れ出して、あまり気のなさそうな彼女の職場を訪れる。「舌きりすずめ」とか「花咲かじいさん」の悪いおじいさんを連想してしまう。
 これは効き目がないようだったけど、繰り返しはもうひとつあって、ドライブインで2個入りのチョコを勧めた店主のアドバイスどおりにして成功したロマンは、妻との関係に悩む父親に、同じ男にアドバイスを受けるよう勧めるのだ。
 人生を前に進めてくれるのは、ふとした小さな助言だったりする。それがお守りになったり、本当の予兆だったり。心温まるいい映画だった。 
posted by HIROMI at 10:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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