2016年09月20日

めぐりあう日 

 生まれてすぐ養女に出された30歳のエリザ(セリーヌ・サレット)。実母を探すため、専門機関に調査を依頼するも、「匿名出産」の壁に阻まれて、たどり着くことができない。調査では、母は娘に会うことを拒み、自分には子供はいないと言っているという。父のことは何も話さなかったことから、エリザは、レイプが原因だからでは、と疑う。息子ノエとともに出生地のダンケルクに引っ越し、自ら調べ始めるが、生まれた産院はすでに移転。自分を取り上げてくれた助産婦の消息も分からなかった。

 その間も日常は流れていく。エリザは理学療法士として働いているが、ノエは新しい学校に行きたがらない。アラブ系の風貌のため、給食時に、豚肉は食べていいのかと聞かれるし、クラスにもなじめずいじめられる。だが、エリザは自分のことで精一杯。

 そんなノエを、学校で給食と清掃の仕事をしているアネット(アンヌ・ブロワ)が気遣う。市場で最初に二人が視線を交わす場面は、二人の間に、彼らの知らない決定的な関係が存在することを明かしている。アネットは、ノエの瞳に惹かれるが、なぜそう感じるのかは無自覚だ。そして、ケガをした彼女が、学校の保護者に教えられてエリザのもとを訪れ、二人は出会うのだった。

 太って分厚いアネットの背中。それをさすり、向きを変え、力を加えるエリザ。身体そのものの迫力は、過去の空白を埋めるかのような、強烈な母子の触れ合いに見えた。だが、エリザは空白を抱えたまま。子供はいるのかというエリザの質問に、アネットはいないと答えるが、治療の繰り返しから、アネットの方が、エリザにより親近感を覚えていくのだった。

 人種が違うように見えるノエを養子かと聞いたアネットは、養子は自分の方だと言われて動揺する。そして、娘の方から自分を見つけてくれるよう、申請書を書くのだった。だが、彼女を実母だと知ったとたん、エリザは否定と怒りの気持ちで激しく混乱する。

 エリザの養母は、しょっちゅう電話をしてきて心配している。アネットにも同居の母親(フランソワーズ・ルブラン)がいて、彼女は、市場で移民の子供を見ると、バックを隠せとアネットに言う。アネットが娘を見つけたいと言い出すと、父親がアラブ人だから知らない方がいい、と言う。母親の中には、根強い有色人種への差別感情があるようだ。
 エリザがアネットの兄の店に来た時、彼も、アネットの恋人だったアラブ人への悪態をつく。アネットがエリザを養女に出したのは、アラブ人の子供だったからだろう。だが、彼女は中絶は選ばず産んだのだ。そして、今まで母と兄の言いなりだったアネットは、娘を前に、やっと自分の本当の気持ちを口に出す。

 自分を確認するため、エリザにはどうしても母を探すことが必要だった。それまで彼女は充分には親になれず、母を求める娘のままだった。緊張したままもがいていたエリザの表情に、笑顔が戻る。彼女はやっとノエに向き合えることだろう。一方、娘を手放してからのアネットは、老いてもなお、母に従う娘のままだったのだろう。彼女も、家族の抑圧から解かれて本当の感情を見つけるには、娘と会う必要があったのだ。

 母を見つけたエリザは、ノエとつながる父も発見した。最後に男の声で朗読される「あなたが狂おしいほど愛されることを望む」は、父にそう思っていて欲しいという、彼女の深い望みのようだった。
posted by HIROMI at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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