2017年06月04日

光と影のバラード

 赤軍が勝利を収めたものの、まだ内戦状態が続いていた、ロシア革命直後のソ連。困窮する市民への援助要請を受けて、モスクワへ金塊を送ることが決定されるが、その金塊をめぐって、敵である白軍や無政府主義者たちが入り乱れて、争奪戦を繰り広げることとなる。

 建物の中で、請求書を読み上げる者、無為をむさぼる者、報告を待つ者。雑然とする中、通信が読みあげられると、突然会議が始まり、組織が動き出す。複雑な緩急で進む画面が、思い切り自由な感じ。
 公安委員会や党という、重苦しい言葉が飛び交うが、登場人物たちがいるのは、広大な草原の中の粗末な建物。車を牛の大群がさえぎったり、建物の前に大量の洗濯物がはためいたり、風景が美しく牧歌的。
 そして、官僚体制がまだ出来上がっていないのか、もと戦友だった彼らの間には、身分の上下がそれほど感じられない。彼らには、ともに戦った深い絆があるはずなのだ。

 だが、組織が恐れたとおりに裏切りが起こり、発端となった殺人の黒幕が誰なのか、ミステリーが明かされていく過程と、まるで西部劇のようなアクション満載の追跡劇がからんでいく。

 拷問の跡を残して惨殺された仲間の死体が発見される場面や、列車が襲われて機関士や乗客が撃ち殺される場面など、突然で無残な死の描写が迫真。陰謀や災難が日常であるかのように、人々が次々と死んでいく。

 金塊を運ぶはずだったフーロスは、何者かに意識を奪われて不在だった3日間を、仲間に疑われて拘束される。だが、護送の途中に脱走し、金塊のゆくえを追って、列車強盗のブロイエフと渡り合う。
 この物語の美しさは、フーロスが自分を疑った仲間を恨まず、出会った敵をむやみに殺さず、正しいことをするために奮闘する姿だ。金塊のありかを他言するかもしれない村人を助け、負傷した裏切り者のレノケを背負って、どこまでも歩いていく。彼は理想を信じ、仲間との記憶を胸にたぎらせているのだ。

 映画の冒頭、赤軍の勝利に感極まって抱き合う男たちが映されるが、その素朴で美しいシーンが、見事に重なるラストが、とても感動的だった。 
posted by HIROMI at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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