2008年09月28日

次郎長三国志

 予告編で流れてたロック調の曲に惹かれて「次郎長三国志」を観に行ったら、観客の年齢層が思いっきり高くてびっくり。

 三年の渡世修行から帰った次郎長(中井貴一)は、喧嘩の仲裁に入ったために人殺しの罪を着せられて御用の身になり、お蝶(鈴木京香)との祝言の夜に、囲みを破って再び故郷を出奔する。
 ほとぼりが冷めて帰ってきた彼は、路頭に迷っている力士の頭取・久六らを引き受け、相撲興行を打って東海道中に名をとどろかせる。そんな中、義理の兄の賭場に、黒駒の勝蔵を後ろ盾にした甲斐の祐典仙之助が殴り込みをかけたという知らせを受け、子分とともにお蝶も連れて甲斐に向かうことに。

 次郎長がお蝶を抱き寄せる場面、お蝶の髪から口でかんざしを抜くのが、情があってどこかコミカル。鈴木京香もよかったけど、中井貴一って、こんなに色っぽかったんだ。
 子分は、切れ者の大政をはじめ、名古屋弁丸出しの鬼吉、綱五郎、坊主くずれの法印の大五郎、森の石松、女癖の悪い大野の鶴吉、伊達者で手癖の悪い追分の政五郎と、みんな個性的。石松がまともにしゃべれず、政五郎が通訳する場面が笑えた。

 次郎長に罪を着せたのは勝政の子分の三馬政で、石松の駆け落ちの相手を奪ったのも彼なら、法印の大五郎が惚れた女をかどわかしたのも彼。次郎長を裏切った久六と組んで襲撃し、お蝶が彼の弾に撃たれてしまう。次郎長に惚れてる子分たちが、個人的にも次郎長の敵に因縁があり、心を一つに恨みを晴らす、という設定は納得。
 でも、さんざん名前が出る黒駒の勝蔵とからむ場面がほとんどなく、彼との関係がよく分からなかったし、なんで久六が急に裏切るのかも腑に落ちなかった。次郎長の話をよく知ってないとついて行けないというのは問題かも。
 
 でも、とにかく義理と人情で泣かせる場面は満載。法印の大五郎が、相撲興行の金をもらって女郎になった女を身請けに行き、一人で帰ってきて、病気だった女を腕の中で看取ったことを泣きながら話す場面。お蝶を医者に見せるための金を工面にきた鬼吉を、邪険に追い返しながら、結局なけなしの金を持たせる親。法印の大五郎が瀕死のお蝶にお経を頼まれ、「わし、生臭坊主でお経忘れてしもたから、覚えなおすまで待っててえな」という場面。昔のチャンバラ映画って、こうやって観客を泣かしていたんだろうな、と思った。法印役の笹野高史が光っていました。
posted by HIROMI at 21:27| Comment(4) | TrackBack(7) | 日記
この記事へのコメント
マキノ監督の映画はなんか惹かれるところがあり、また見てしまいました。この映画を見てあらためて感じたのは、その大衆性でした。一昔前、テレビもビデオももちろんDVDもないころ、たくさんの日本人がともに笑い、涙を流した映画ってこんな映画だったんじゃないかー。そんなことを思いました。少々、いやかなりストーリーの展開や内容に無理があるなあと思うところもありましたが、映画を見ている他の人たちと一緒に笑ったり、泣いたりできた?のがよかったです。でも映画を見てたのがほとんど中高年の人でしかもあんまり多くなかったのが、とても残念でした。出演者は超豪華メンバーで、演技もすごくよかったのに。
Posted by はっさく at 2008年09月30日 21:07
はっさくさん
コメントどうも有難うございます。
時代劇全盛の時代、渡世物とか、こんな感じで親子の縁とか男女の別れを描いていたのでしょうね。義理人情が日本人の琴線に触れるっていうか。笹野高史が活躍してたので、なんだか「男はつらいよ」みたいに思われました。昔の次郎長は、これほど軽い笑いはなかったかもしれませんね。
前作の方が、完成度が高かった気がしますが、気楽に楽しめました。俳優陣、チョイ役の人までが超ベテランで豪華でしたね。監督の奥さんも出てたけど、セリフなかったですよね。
Posted by HIROMI at 2008年09月30日 23:11
TBありがとうございます。
そういえば娘(真由子)も兄(長門裕之)も出てますから、一族総出ですね(笑)。
次郎長たちが捕えられた小政(北村一輝 )を助けにいくんだけど、森の中に潜んでいたお蝶(鈴木京香)とお仲(高岡早紀)が人質にされてしまうシーンがありますよね。
次郎長たちはいったん観念して言われる通りに刀を捨てるんですが、うまくお仲の機転で窮地を脱して、そこから、森の中で三馬政(竹内力)に刺されてしまった鶴吉(木下ほうか)のところへ次郎長一家が駆けつけるシーンにつながります。
このとき、刀を拾い上げた次郎長たちが「鶴吉!」と叫ぶ声が、そのまま森の中で鶴吉を抱きかかえている次のシーンにかぶっていくんですね。
一つの台詞が二つのシーンをスムーズにつないでいて、こういうつなぎ方は他のシーンでも使われているんですけど、こういうところは映画を知ってるというか、さすがだなあと思います。
Posted by きぐるまん at 2008年10月20日 10:31
きぐるまんさん
お越し下さってありがとうございます。
監督の娘さん、初めは気がつかなかったのですが、観ている間に、お母さんの面影があるなあと。かなりエキサイティングで強烈な印象でしたね。お兄さんの出ている場面は泣かされました。一族総出にできるところがすごいですよね。
おっしゃっている場面、確かに一つの叫び声で二つのシーンがつながっていましたよね。ワープのようで、すごく印象的でした。仲間の身を案じて早く駆けつけたい、という彼らの気持ちがそのまま現れていると感じました。こういうのはやっぱり映画ならではの手法ですよね。
この場面、不意をつかれた三馬政をそのままやっつけた場面を省略したのかな、と思っていたら、後で彼が無傷で出てきたので、なんであの時に殺しておかなかったんだろう、と思いました。想像を裏切って展開するのも計算ずくなんでしょうか。三馬政は、いつも思いもかけない場面に出てきて、そのたびに憎々しさが増している感じでしたが。
Posted by HIROMI at 2008年10月20日 20:09
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