2008年12月07日

アメリカばんざい crazy as usual

 ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい crazy as usual 」の上映会に参加した。
イラク戦争で息子を失くした母親、心や体に傷を負った帰還兵たち、彼らを支援するボランティア、それぞれが語る体験が衝撃的で重かった。

 米国のイラクでの戦死者は4千人。その後ろには4万人の重傷者、10万人のPTSD患者がいるのだが、戦場で心に深い傷を負った者は、帰還後、社会に適応できないまま支援なく放り出され、アメリカのホームレスの3分の1が帰還兵だという。

 兵士になったのは、大学に行きたかったから。金がないけど、軍に入れば行けると聞かされた。兵士になったのは、週50時間バイトしても、ヤクを売っても食べていけなかったから。兵士になればまともな将来が開けると聞かされた。だが、そこで得た技術は古くて役に立たず、せいぜい武器の扱いに慣れるだけ。食い詰め、希望に餓える貧しい青年たちを、軍が甘い言葉で誘っているわけだ。

 英雄になることを夢みた者も、なるべく人を殺さずにおこうと思っていた者も、戦場での体験は想像を超えていた。自分の乗った戦艦だけが、撃ったミサイルのうちのたった一発を敵の艦に命中させた、と聞き、他に32もある戦艦が撃った総計100ものミサイルのゆくえにショックを受ける。「群集の中の一人が攻撃してきたら、その場にいる全員を殺せ」と命令され、劇場であろうが市場であろうが撃ちまくって、100人以上を殺したという者。メディアで語られない市民の犠牲の実態に唖然とした。

 退役になったり逃亡して再び送還されるのを逃れても、戦場での悪夢は忘れられず、やってしまったことへの後悔に苦しんで麻薬や酒におぼれるという証言は痛ましい。ホームレスになった帰還兵は、森や路上で暮らし、殺されたり自殺したり。仲間に殺されたホームレスが残したバラの鉢植えが悲しかった。

 新兵の訓練場面がショッキングだ。一人称が禁じられる。到着すぐの家族への電話でも上官に示された5行以上は話せず、受話器を持つすぐ後ろで「叫べ!」と怒鳴られる。上官の命令や質問に答える声が、すさまじい絶叫のよう。洗脳という言葉がぴったりではないだろうか。こうやって殺人の命令に従うようにされるのだ、と思った。

 この映画の希望は、イラク送還を拒否し、収監された後、戦場での自分の体験を若者に伝える元兵士だろう。帰ってきてから支援するのも大事だが、騙されて兵士になるのを予防しまければ、と活動する彼。彼の声が多くに届けばいいなと思う。

 上演後、藤本幸久監督のあいさつがあった。
 「死者が増えているせいでイラク戦争への疑問が大きくなっているとはいえ、アメリカ人の多くは正義の戦争があると考えている。帰還兵のケアができないほど今アメリカは金がなく、今後の戦争のために取る方法の1つは軍事会社を使うこと、もう一つは軍事一体化を進めることで、日本に金と若者を要求することが予想される。そんななか、日本の若者に戦場にいくとはどういうことかを伝えたかった」そのとおり、若者に観てほしい映画だと思った。
 
posted by HIROMI at 21:49| Comment(2) | TrackBack(2) | 日記
この記事へのコメント
「とれぶりんか」のホームページにもこの映画の感想が載っていましたので、そちらも見てください。私は観ることができませんでしたが、ニュース番組で時々取り上げているのを見ました。また、「軍」が高校まで出向いて、若者を勧誘するというのもやっていました。いつも世の中の「底辺」の人が悲しい思いをしているんですね。
Posted by MAO at 2008年12月08日 11:04
MAOさん
コメントありがとうございます。
昨日、とれぶりんかのHPにTBさせて頂きましたよ。
貧しい若者たちがまやかしの保障と引き換えに悲惨な目にあっている現実に、暗澹としました。甘言で釣り上げて、壊れたら捨てる。国家がやってる詐欺みたいなものですね。格差社会が進む日本の、それほど遠くない将来図なのだろうか、と思うと怖いです。
Posted by HIROMI at 2008年12月08日 19:41
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