2009年09月11日

幸せはシャンソニア劇場から

 1936年、パリの下町の劇場で繰り広げられる群像劇。

 初老の男が警官の取調べを受ける場面から始まり、彼が殺人を犯したらしいことが分かる。そして、場面は彼が語る「下町」へ。俯瞰される茶色にくすんだ古いパリの町並みが美しい。「パリの空の下」とか「パリ祭」とかの、昔の白黒映画に色をつけたような感じ。カメラが劇場の中に入っていった途端、たくさんの人々が動き出す。カメラワークも、物語もよかった。

 シャンソニア劇場で裏方を担っていたピゴワル(ジェラール・ジュノ)だが、経営が傾いた劇場は、不動産業者のギャラピア(ベルネール・ピエール)に取られ、妻は出奔。内緒で路上や店先でアコーディオンを弾いて父を助けていた息子のジョジョ(マクサンス・ペラン)も、裕福な男と結婚した妻の元に送られる。希望を失くしたピゴワルだったが、閉鎖された劇場で一人で芸をするジャッキー(カド・メラッド)の姿に奮い立ち、仲間と劇場を再建する。

 離れ離れになりながらも心を通わすピゴワルとジョジョの親子、共産主義の青年ミルー(クロヴィス・コルニアック)と、彼が恋する歌手のドゥース(ノラ・アルネゼデール)。ドゥースに援助を申し出ながら、彼女を手に入れようとするギャラピア。ギャラピアは、ジャッキーを抱きこみ、自分の所属するファシストの集会で芸をさせる。狡猾な権力者と、その術中にはまって裂かれ、そこから再生する仲間の物語でもある。

 劇場の中でも外でも、心をうつ場面に歌があふれて素敵。互いの手紙を握りつぶされていた親子だったが、ミルーが母親を説得してめでたく再会。彼らが、夜中にアコーディオンと歌を響かせる場面は幸せにあふれていて、窓から文句を言っている近所の人々さえうれしそう。
 歌を認められて他の劇場に引き抜かれたドゥース。その歌をラジオで聞いた”ラジオ男”(ピエール・リシャール)は、彼女に会うために何十年ぶりに家を出、作曲と指揮を再会。ドゥースは劇場に戻り、まわり道ばかりだったミルーと彼女の恋も花開く。彼女がミルーを見つめながら歌う恋の歌も心を打った。

 ミルーがストライキを扇動し、それをヤクザがつぶしにかかる。ユダヤ人差別のセリフや、極右団体の集会。1936年が、第二次世界大戦前で、ドイツでヒトラー政権ができたすぐ後というのは分かったが、その当時のフランスのことをちゃんと知っていたら、もっと面白かったろうな、と思う。フランスにかぶれてるっちゅうのに、私はフランスの近代史を分かってないのよね。人民戦線が選挙で勝利して人々が興奮したり、2週間の休暇を定めた法律が成立したというニュースが流れる一方、ナチのような勢力が何度も画面に現れる。ストつぶしの暴力でこん睡状態になった人たち。セリフにしか出てこない悲劇もあり、実際にはかなり暗い時代だったのでは、と思う。そのなかで、妨害にも負けず、希望を捨てずに懸命に生きる登場人物たちの、強さと明るさが際立ってみえた。

 彼らが絆を取り戻し、幸せを見つけていく過程で、劇場も浮き沈みを経て繁栄を見る。だが、そこで物語は終わらず、ドゥースを奪われたギャラビアが、ミルーと間違えてジャッキーに暴行。ジャッキーの仇をうとうとギャラビアのもとを訪れたミルーが、今度はギャラビアに狙われる。

 そして、突然冒頭の場面に。そうそう、ビゴワルは取調べを受けていたんだっけ。すっかり物語に入っていて、忘れてしまってた。でも、まだそこでも物語は終わらない。最後は、ビゴワルがジョジョの率いる劇場に返ってくる場面。満員御礼を伝える門番。近くに一人腰を下ろすピゴワル。次には再会の喜びが続くはず。この時1946年が、ドゴールの政権というのは知っていました。
posted by HIROMI at 22:18| Comment(4) | TrackBack(17) | 日記
この記事へのコメント
映画を観終わったあと、心があたたまる感じでした。極上のエンターティメントの映画でしたね。
パリに行きたくなりました。今日はエディット ピアフでも聴いて雰囲気だけでも味わいます。
Posted by MAO at 2009年09月12日 19:12
MAOさん
先日はありがとうございました。コメントも感謝です!
心が温かくなる、いい映画でしたね。古いフランス映画が思いっきり元気によみがえったような感じもありました。
ピアフ、この映画で描かれてる時期に活動を始めたみたいですね。私もパリに行きた〜い!
Posted by HIROMI at 2009年09月13日 09:17
こんにちは♪

>実際にはかなり暗い時代だったのでは

大戦間際でナチスの台頭等を思えば想像以上に暗い時代だっ
たと思えてなりませんよね。

ドゥースの夢と才能を認めて素直に送り出したピゴワルの親心
にウルリと来るものがありましたし、何よりもジョジョのアコーデ
ィオンの音に合わせてピゴワルたちが大声で歌い上げるエピも
さることながら、ラストで、ジャッキー含める面々が新たな才能
を開花させての大団円も最高でした♪
Posted by 風情♪ at 2009年09月28日 11:52
風情♪さん
お越し下さってありがとうございます。
暗い時代を、懸命に生きる人たちの人情にほろりとさせられました。ドゥースが離れても、またピゴワルやミルーのもとに戻ってきてよかったです。別離も再会につながって、感動的でした。
ラストの大団円、迫力ありましたね。ドゥースの美声がいいし、ジャッキーの芸も思い切り冴えてるし、ミルーまでが歌って、ミュージカル映画を観てるみたいでした。
Posted by HIROMI at 2009年09月28日 18:50
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