2009年12月23日

ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵No1と呼ばれた男

 フランスで社会の敵bPと呼ばれた、ジャック・メスリーヌの生涯。Part1、Part2の2編上映で、稀代のギャングの軌跡をじっくり描いていた。

 アルジェリア独立戦争で、捕らえた敵が尋問される惨い場面。上官の命令で彼らを殺すが、除隊で帰ってきた家は、ごく普通の家庭。大人しい両親の元で育ったメスリーヌが、暴力の道に走ったのは、戦争の影響があったのだろうか。友人と空き巣に入った時に見せた機転のよさで、ギャングのボス・ギドに紹介されるが、この時からすでに筋金入りの恐れ知らずだ。

 何度も繰り返す銀行強盗。白昼堂々、派手だが無血の犯行で大金を手にする。彼の行動は、優しく律儀な面と、残酷で非情な面が際立っている。
 女を買って遊ぶ仲間に混ざっていながら、スペインで知り合ったソフィアを真剣に愛して結婚し、妻子のために一旦は堅気の仕事につく。だが、仕事を失くして仲間の元に戻る時には、止める妻を殴りつける。娼婦のサラがヒモの男に暴行されると、男を残虐に痛めつけて殺し、仇をうつ。
 森番に見つかり、ためらいなく殺すかと思えば、かくまってくれた家族に大金をお礼するし、テレビニュースで犯人だと気づいた女に優しく振舞う。

 驚きなのは、何度もの脱獄場面。残酷で非情な特別懲罰刑務所を、監視の眼をくぐって逃げる。殴らて、睡眠を奪われ、放水され、すさまじい拷問の後、まともな体と精神を保っているだけでも大変な状況下で、失敗の結果を想像すればおののくはずが、周りを観察し、計画し、実行する度胸はものすごい。しかも、約束どうり、仲間を助けに戻ってくる。
 裁判中に判事を人質に逃走するのも想像を超えるし、収監される直前、あらかじめトイレに隠した銃で逃走するのも、面会の弁護士を巻き込んでの脱獄も驚き。

 すごく周到な反面、行き当たりばったりな感じのする場面も多かった。銀行襲撃では、30秒以内のはずが、向かいの銀行もついでに襲うし、隠れ家に拾った女を連れ込むし、不動産業者を誘拐したものの、彼に身代金を値切られたあげく失敗する。豪胆にも、スキだらけにも見えた。

 大きく世間の注目を浴びるなか、チリのクーデターのせいで、新聞に自分の記事が載ってないことに腹を立て、獄中で自伝を書く。 彼は軍団を率いることもなく、手下を使わずに自ら強盗を行うが、それは自己顕示のためだったのだろうか。
 相棒が次々と変わるが、初めの相手が離れたのは、新入りを信用する自分のカンに固執したからだし、二人目は、革命家気取りでメディアに露出したからだし、三人目は、記者殺害に対する反目に気づかない自己満足のせいだった。

 彼は、自分を革命家といい、体制を壊すというが、「ギャングはギャングにしかすぎない」という検事の言葉にも、アナーキストの旧友の「銀行を襲っても彼らはつぶれない。奪った金で贅沢をするのは、体制に奉仕していることだ」にも反論できない。
 確かにメスリーヌは大物だし、社会を揺るがしたことは事実でも、自分の姿に酔って、自分のやっていることに、事実以上の意味を与えたかったのだと思う。マスコミが煽り、彼がそれに応え、妄想がつのっていったのではないだろうか。

 だが、彼は自分の最後がどんなものかは明晰に分かっていた。捕らえても捕らえても逃れて罪を重ねる男を、警察は、無抵抗の場面で殺すのだ。何度も何度も繰り返された警察との銃撃戦が、不意に決着する場面は、壮絶で悲哀に満ちていた。
posted by HIROMI at 20:22| Comment(0) | TrackBack(2) | 日記
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憎めない男。『ジャック・メスリーヌ フランスで社会の敵(パブリック・エネミー)No.1と呼ばれた男』
Excerpt: フランスに実在した伝説のギャングスター、ジャック・メスリーヌを姿を描いた作品です。
Weblog: 水曜日のシネマ日記
Tracked: 2009-12-24 12:17

ジャック・メスリーヌ/フランスでパブリック・エネミーNo.1と呼ばれた男 Part.1&Part.2
Excerpt: 「どんな映画もフィクションの部分があり、一人の男の人生を忠実に描き切る事は出来ない」 という前置きでそれぞれ始まる前後編。 まとめて観て来ました〜。2本まとめてレビュー{/light/} 別々料金..
Weblog: 我想一個人映画美的女人blog
Tracked: 2009-12-24 19:53