2010年02月20日

オーシャンズ

 「午前十時の映画祭」でスティングを観ようと、十分余裕で映画館に着いたのに、すでに完売。え〜っそんな〜!ってことで、急遽、本編が始まる直前の「オーシャンズ」に飛び込んだ。

 「WATARIDORI」のジャック・ペラン監督が、「海って何?」という息子の問いかけに答えようと撮ったもの。構想10年、15人のカメラマンが世界50ヵ所で4年の歳月をかけて撮影したという。技術と執念。とにかく圧倒的な映像だった。

 ガラパゴスのイグアナの眼に、打ち上げられるロケットの火が映る。この瞬間だけでも驚異的。人間は宇宙に魅せられて探索を続けているが、すぐそばに未知の世界が広がっている。それが海。水の中の銀河。

 足の間に膜があり、それをマントのように広げて泳ぐムラサキダコは、まるで凧のよう。むくむくとした雲のような触手をもつ大きなクラゲは、無数のパラシュートみたいだし、巨大なエイはグライダーに見えて、海がもう一つの空みたい。すべてがゆっくりとして雄大。

 イルカに追われて海面近くに上がってきた鰯を、カツオドリが鋭いダイブで捕らえていく。鰯の群れの美しいカーブ。逆巻く波の中に突き刺さる鳥たち。最後に現れたクジラが、ひれを交互に動かしてクロールのように泳ぐ。
 浜辺で憩うアタリアの子どもを、突然現れたシャチが襲う。卵から孵って海へと急ぐカメの子どもを、待ち構えた鳥たちが襲う。容赦のない命の攻防だが、微妙なバランスをくずすことはない。

 海の中の草原で草を食むジュゴンは、昔、陸にいた草食動物だったそうだ。同じく草を食べるカメも、陸にいた爬虫類から進化したとか。妙な顔つきのコブダイとか、岩みたいにゴツゴツしたオニダルマオコゼとか、妖怪を連想させる大型のカニとか、珍しい生き物のオンパレード。

 体長30メートルというシロナガスクジラはすごいと思ったが、対象が小さくても、ごく近くから捉えた映像は、どれも息を飲む迫力だった。管楽器のようなクジラの声も、海のカナリアと言われるイルカの声も、はっとするほど美しかったが、シャコが砂を掻くときの音や、アンコウが小さな魚を捕獲する音など、微妙な音がクリアに聞こえて臨場感たっぷりだった。

 印象的だったのは、コシマガニの集団脱皮。何万匹ものカニが、高く重なりあって広大な海底を覆い尽くす。こんな光景は陸上にはないだろう。鰯の群れだと驚かないけど、カニの群れは異様だ。

 ショッキングだったのは、フカ漁の映像。網にかけて捕えたフカを、ヒレだけを切って、胴体を海に捨てる。手足をもがれたように尾やヒレの切り口から血を流しながら、海底に沈んで息を吐いている姿はあまりに無残。だけど、この映像は作ったものだとか。取材したことを再現したというのだろうか。とにかくフカひれスープはもう飲みたくない。

 人工衛星が捉えた海の汚染、人間が滅ぼした多くの海の生物の剥製や、温暖化で氷の解けた北極。人間の愚かさが、何千億年の地球の歴史を崩していくのか。美しい映像の後で、こんな事実はやりきれない。

 灯台に、それより高い波が打ち付ける。トロール船が波にもまれ、船首が何度も波の中に沈んでは、波に持ち上げられてまた姿を見せる。船員の恐怖はどれほどだろう。人智を超えた荒れた海のすさまじさも迫力だった。
posted by HIROMI at 16:39| Comment(0) | TrackBack(11) | 日記
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