2010年07月25日

華麗なるアリバイ

 上院議員アンリ(ピエール・アルディティ)と妻エリアーヌ(ミュウ=ミュウ)の大きな邸宅に週末、友人たちが集まってくる。議員の姪クロエ(アガット・ボニゼール)と遠縁の娘マルト(セリーヌ・サレット)、精神科医のピエール(ランベール・ウィルソン)とその妻クレール(アンヌ・コンシニ)、彫刻家エステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)に小説家のフィリップ(マチュー・ドゥミ)。
 ピエールはいつも忙しそうで、子供たちと妻の待つ昼の食卓にもつかないが、議員宅に夫婦で訪問。エステルはピエールの愛人で、愛を確かめるように彼の首に腕を回す。そのエステルを愛するフィリップは、二人の関係が気に入らない。そして、フィリップに恋するマルトは、彼の注意が他の女に行っていることにいら立ち、アンリと射撃の練習している所に来たクレールと彼に、不意に銃口を向けて驚かせる。複雑に交差する男女の関係は、初めから不穏な様相だ。
 そんななか、最後に到着したのは女優のレア(カテリーナ・ムリーノ)。彼女を見たピエールの表情から、エステルは彼女が彼がかつて本気で愛した女だと直感。レアとエステルがディナーの席で口にするホテルの話は、ぎりぎりの探りあいと自己顕示が混じってきわどい。

 豪邸に社会的地位のある男女が集まって事件が起きるのは、「ゼロ時間の謎」と似ていた。犯人探しの展開も。映画としては今回観た方が面白かったし、役者たちの感情の表現もうまかったのに、話の詰めが甘い感じだったのが残念だと思う。

 レアはピエールを誘惑し、ベッドインのあと妻の元に帰った彼を、翌朝に呼び出して昼食に誘うが、妻子の存在を理由に断られ、逆上して罵倒する。きっと彼が殺されるという予感どおり、その後、プールから上がった彼は何者かに射殺され、現場には銃を手にしたクレールと、ピエールに腕をつかまれたエステル。エステルはとっさに、クレールの手から銃を払いのける。エステルのこの動作が、最後まで不可解だった。

 クレールは連行されるが、彼女が握っていた銃は、犯行に使われたものとは違う経口だったことから釈放に。一方レアは早々と別荘を離れ、テレビに出演。この時点で一番怪しいのはレア。
 だが、フィリップが衝動的にレアのいるホテルを訪ねた後に流れが変わる。翌朝、忘れ物に気づいて部屋に戻ったフィリップは、レアとベッドインしたと聞かされ、記憶が全く消えていることに驚く。挑発と軽蔑の混じった笑い声。そして、動揺した彼がドアを出た後に入ってきた何者かに、今度はレアが殺されたのだ。

 この事件を解決すべく、グランジュ警部が捜査を進めるが、結局彼はただの狂言回しで、事件を解決に導くのは、登場人物たちがそれぞれ自分の思惑で行動したこと。
 酒びたりのフィリップはプールで酔いつぶれ、助けたマルトからレアの死を聞かされてエステルを疑い、自首を勧めに訪れるが、警察が来たから天窓から逃げろと言われ、思わずいわれたとおりにする。だが、そこに来たのは警察ではなかった。

 一番疑わしかったのは、やっぱりクレール。だが、エステルを前にした怒りで引きつった表情は、それまで一度も見せなかった。彫刻やナイフや、凶器に変わり得る物を前に、どちらが正体を見せるのか、一番緊張にあふれた場面だった。
 確かに、エステルがフィリップにウソを言ったせいで、そして、ことの成り行きを見るのが屋根の上という危険な場所のせいで、より場面は盛り上がる。
 だが、なぜエステルはフィリップにウソを言ったのか、そして、クレールとエステルの共謀が、どのようにして成立したのか、一番肝心な点が説明されていないことが、消化不良な気がする。
posted by HIROMI at 16:01| Comment(0) | TrackBack(3) | 日記
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