2010年08月27日

ちゃんまげプリン

 シングルマザーのひろ子(ともさかりえ)は、まだ小さい息子の友也(鈴木福)を抱えててんやわんや。朝も大変だし、お迎えを待つ子のために夕方もバタバタ。残業をしないと職場での評価がないのがさびしい。そんななか、180年前の江戸時代から、木島安兵衛(錦戸亮)がタイムスリップしてきた。

 気ぜわしい夕食はほとんどが冷凍とかレトルト。気持ちにも時間にも余裕のない暮らしの舞台裏が、見知らぬ闖入者の前に広げられるのが、わびしくて可笑しい。狭いキッチンのフローリングに正座して、互いの頭が少しだけのぞいていたり、ポケモンゲームを始めたり。普通の暮らしの中に、いきなり侍がいる風景が奇妙で笑える。

 時代劇ではあまり感じなかったのに、現代のなかでは、日本刀がすごく重そう。迷い込んだ侍の姿がへんにリアルなのは、役者のうまさだろうか。所作のひとつひとつがきれいで、腰に手をあてて背筋を伸ばしていて、歩く時も走るときも、頭の位置がきっちり定まってふらつかない。古い言葉づかいも端整。

 路頭に迷った安兵衛は、しばらく世話になるお返しに、家事を引き受け、食事も友也の世話もやってくれる。自由に残業ができるようになったひろ子は、職場で信頼を得ていくけど、子供のお迎えがなくなるのが大きな関門だから、これってリアル。
 安兵衛はなぜか料理の達人で、和食のしっかりした食事も作れば、おいしいプリンも作ってくれる。男尊女卑の江戸の男が、表向きの仕事をがんばる女を支える理想の主夫に。だが、これも恩義とか実直とかの侍の姿に違和感なし。

 だが、ケーキ作りのコンテストで優勝した安兵衛は、有名店にスカウトされて、自分の仕事で精一杯になり、友也は寂しがり、ひろ子も再び余裕ゼロに。少しは友也にかまって欲しいというひろ子に、安兵衛は「表向きの仕事ゆえ」といい、結局、ひろ子は夫を追い出したように、安兵衛を追い出してしまう。心を隠した気の短い結論が切ない。

 ひろ子にとって、安兵衛は便利な主夫で彼がいないと生活はうまくまわらない。でも、それと同じくらい、自分も安兵衛にとって、かけがえのない存在でありたかったのだと思う。欲張りだけど、この心の流れは自然でしょ。でも、二人は主従関係みたいだし、彼女が望むように恋愛には進まない。だが、友也と安兵衛はしっかり絆を結んでいく。そして、いなくなった友也を二人で必死に探すうち、安兵衛は友也とひろ子を、ともに大切な人だと悟る。

 日本刀でホワイトチョコを削って雪のように降らしたり、パレットナイフでヤクザたちを一瞬でやっつけたり、ここぞと言う時の安兵衛はほんとにかっこいい。実直で頼りがいがあって、突っ張りながらも彼に惹かれるひろ子の気持ちはよく分かる。紆余曲折を経て、3人の気持ちが近寄っていっても、それでも、急に現れた安兵衛は、急にいなくなる宿命だった。
 せっかく今からなのに。なんだか、とてもとても切ない話だった。母子を助けにきて、再び去っていく。これって、シェーンでしょ。友也は、疲れては居眠りし、よく急に泣き出す。子役うまいよねえ。これも切ないシーンだった。

 エンディングテーマの清志郎の「REMEMBER YOU」を聴くために観たんだけど、期待以上の映画でした。
posted by HIROMI at 23:03| Comment(2) | TrackBack(4) | 日記
この記事へのコメント
HIROMIさん、こんにちは^^
残暑お見舞い申し上げます。
それにしても異常な暑さですねぇ><
溶けてないですか(笑)?

さて、この映画、やはり中村監督の良さが出ていた作品でした。
あの雪を降らせるシーン、良かったですねぇ!
そして何と言っても鈴木福クンが上手かった(笑)
清志郎の「REMEMBER YOU」も、違った意味で泣けてきました。
何故か清志郎の歌を聴くと元気が出ます^^

Posted by cyaz at 2010年08月31日 08:56
cyazさん
お越し下さってありがとうございます。
明日から9月だというのに、猛暑が止まらないですね。夏は得意な方ですが、さすがに参ってます(笑)。cyazさんも、お体大切になさって下さい。

中村監督、この映画を観て、他も観てみたいと思いました。人への眼差しが優しいし、展開もおもしろいですね。
錦戸亮はかっこいいし、鈴木福君はすごい芸達者だし、今まで知らなかったけど、力のある役者に出会えたな、と思います。
「REMEMBER YOU」、物語の内容とぴったりで、よけいにジーンときました。エンディングテーマが違っていたら、この映画は観てなかったと思うので、清志郎の曲を選んでくれた人に感謝です。彼の歌、いいですよね〜。
Posted by HIROMI at 2010年08月31日 19:28
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