2010年10月27日

国家代表!?

 オリンピックの代表なんて、普通、国内でのたくさんの大会で勝ち進み、名を挙げていないとなれないはず。なんだけど、この映画の主人公たちは、全然苦労せずにそのチャンスを手にする。というか、そもそも手になんかしたくないのに、無理やり説得されるのよね。

 1996年、ムジュにオリンピックを招致するため、急遽スキージャンプのチームが作られることになり、子供スキー教室の講師パン(ソン・ドンイル)が、選手集めを任されるのだが、韓国にはこの競技の選手が全然いなくて、他のスキー競技の経験者に白羽の矢が当てられた。しかも、なぜかみんなワケありの男たち。
 幼い頃にアメリカに養子に出され、母を捜して韓国に来たチャ・ホンテ(ハ・ジョンウ)。アメリカでアルペンスキーのジュニアの選手だった彼に、パンは、フリーターだから会うのを拒否されてるんだ、オリンピック選手になれば会えると説得。
 高校時代に薬物使用でメダルを剥奪されて、クラブで働くフンチョル(キム・ドンウク)。彼の仲間のチルグ(キム・ジソク)は、耳の聞えない祖母と中学生の弟ボング(イ・ジェウン)と貧しい暮らし。高圧的な父のもとで焼き肉屋を手伝うジェボク。3人は、兵役免除に思わずつられる。

 国を背負っている自覚も愛国心もなく、国も全然彼らに目をかけないなか、スキー場の建設現場でミーティングして「ここで遊ばないで」と言われたりしながら、ともかく始まる必死な訓練。ロープで木に吊るされたり、90キロで走るバンの上でスタート姿勢をとったり。長い滑り台で滑走したり。これってホント?のハチャメチャさが笑えた。

 反目しあったり、団結とは程遠いチームだけど、何だかどんどん盛り上がっていく。世界選手権でアメリカチームと喧嘩し、出場停止になって意気消沈が、一転、雪のせいで全員出場になって歓喜の大騒ぎ。招致先がソルトレイクに決まって、チームが解散と分かると、怒ったみんなはコーチに詰め寄り、コーチは委員長に詰め寄り。焦点がオリンピックに定まっていく過程が熱い。

 フンチョルはコーチの不良娘スヨンが好きなんだけど、相手にされず、実はエイズなの、と発疹を見せられてショックを受ける。それは実は・・なんだけど、彼女はかなりのキレ者で、チャ・ホンテの実母の居所のデータをちゃっかり盗んだりも。金持ちのお嬢様に苛められる家政婦の母、それを見守りながら気づいてもらえないホンテは、いつか母にマンションを買って救うんだ、と心に誓う。笑わせて、ほろりとさせて、サイド・ストーリーも充実していた。

 そして、長野オリンピックの本番。日の丸飛行隊の活躍しか記憶にないけど、韓国チームのドラマが熱い。実績のない彼らにとまどい、関心スルーの実況のなか、思わぬ活躍を見せて、周囲を引きつけ、実況アナウンスがどんどん熱を帯びていく。観客もテレビの前の人たちも。
 空に向かって伸びる白い滑走路、はるか下に固まる観衆。ものすごい高度からの滑りと滑空の映像は、美しくて、ド迫力だった。

 霧が濃くなったのに、ゴーサインが出され、コーチの抗議も空しく、危険な空に飛び立つチング。もしや。いやいや、長野で事故なんてなかったはず。そして、骨折して出場できなくなった彼の代わりに、ボングが志願。いざとなって怖がったボングを、お前が飛ばなけりゃ俺は兵役だ、と言って送り出した。おぼつかないボングが恐怖と戦う様が可愛そうだ。まさか。いや、長野で誰も死んでないってば。でも、まさかを心配してしまうほど、シリアスな緊迫の場面だった。
 結果はみんなの期待どうりには出せなかったけど、悲劇も回避。勇気と団結の結末に、ただただ歓喜と涙のラストがいい。
posted by HIROMI at 22:49| Comment(2) | TrackBack(1) | 日記
この記事へのコメント
スキージャンプの訓練の模様だけの映画だと思っていたのですが、それぞれの「人生」が描かれていて、笑えて、そしてホロリとさせられる、いい映画でしたね。この映画によって、韓国ではスキージャンプをする人が増えたそうです。映画ってすごいですね。
Posted by MAO at 2010年11月04日 21:13
MAOさん
コメントどうもありがとうございます。エラー表示が出てしまうなか、何度もすみませんでした。感謝です。
私も、競技の訓練とかが中心のコメディかと思っていました。笑える場面が満載でしたが、アメリカへ養子とか、兵役とか、韓国の切実な事情が描かれていて、それぞれが背負っている人生に引き込まれました。役者も上手かったですね。
競技人口が増えているのなら、将来ほんとに強いチームになっていくかもしれませんね。
Posted by HIROMI at 2010年11月04日 23:10
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『国家代表!?』(2009)/韓国
Excerpt: 原題:TAKEOFF監督:キム・ヨンファ字幕監修:いとうせいこう出演:ハ・ジョンウ、ソン・ドンイル、キム・ドンウク、キム・ジソク、チェ・ジェファン、イ・ジェウン鑑賞劇場 : シ...
Weblog: NiceOne!!
Tracked: 2010-11-21 20:22